丸投げ(まるなげ)
【意味】
本来は「物をそのまま投げ渡す」意から転じて、自分の責任や仕事・課題などを説明も指示もなく他人に一任することを指す。単なる「任せる」ではなく、「あとは知らん」と責任まで手放すニュアンスを含む。現代日本社会においては、職場・家庭・政治・デジタル環境のあらゆる場面で観測される日常的行動様式。
【用例】
・上司が「この企画、任せた!」とだけ言って消えた。→それ、典型的な丸投げ。
・家事も育児も妻に丸投げして「俺は稼いでるから」と言う夫。→社会的絶滅危惧種指定。
・学生がAIにレポートを丸投げ。→生成系技術の発展と共に増殖中。
【背景・解説】
丸投げは、信頼に基づく「委任」と混同されやすいが、前者は責任放棄、後者は責任共有という違いがある。
組織文化では、上層部が丸投げを「現場に権限委譲した」と言い張るケースが多く、言語上のカモフラージュとして機能する。
近年では、仕事の外注化、クラウドワークス的労働環境、さらにはAI利用の一般化により、「人に丸投げ」から「機械に丸投げ」へと進化を遂げている。
【派生語】
・丸投げ体質:他人任せを常態化させた組織や人物の性格的傾向。
・逆丸投げ:任された側が、さらに別の人やAIに投げることで、投球ループが発生する現象。
・丸投げ経済:責任を持たずに外注を重ね、全体像が誰にも分からなくなる産業構造のこと。
【時代性】
情報過多社会における「処理の外部化」「責任の希薄化」の象徴的語。
利便性と怠惰の境界を曖昧にするキーワードであり、AI時代の新たな倫理課題を示す言葉として再評価されつつある。


